Listenning
Cacao
Lovers
Their stries
ベンチェでカカオ作りする、いつ行っても何か作業している働き者。
『ベンチェには長いんですか?』
私はベンチェで生まれたんだが、ベンチェは戦争が激しくなってきたので、家族全員でミトーに引っ越したんだ。その後、平和が戻って私達家族もベンチェに帰ったよ。
それから生活と仕事の基盤をつくりもう50年近くになるね。ベンチェに戻ったときは、家族の生活のために何をすればいいだろうかと随分悩んだよ。
『カカオの農業をはじめられたのは?』
22年前、ベンチェでも何件かの農家がカカオを植え始めた。私もその一つだ。でもその時は作ったカカオの売り先がなくて、他の農作物が生活の糧になったんだ。私たち家族も生活が苦しかったよ。
その後、Cargillがきてね、私達にカカオ栽培とその後の技術を教え、そしてできたカカオ豆を買ってくれたんだ。それからたくさんの農家がカカオ栽培をはじめたよ。
カカオ農業をはじめた最初は、私の農園にもたくさんの果樹を植えていたよ。ライチ、ココナッツ、スモモとか他にも色々ね。でも価格は上下するし生活が不安定だった。2004年からCargillのアドバイスのもとにカカオ栽培だけに専念したんだ。カカオポットは決して高くは売れないけれど、1年に2回収穫期があるし、カカオ苗は比較的安くて、高いコストをかけなくても始められたからね。
『カカオ農業を始めた当初は大変だったのでは?』
カカオ農家はたぶんみんなそうだと思うけど、カカオ栽培に夢中で1本1本を本当に愛しているんだ。苗を買うのは安いといったが、けども育てるのは丁寧な作業が必要なんだよ。
だから植えた後に手間をかけるのを面倒がる農家は遅かれ早かれ他のもっと簡単に収入になる作物に転作することになるよ。カカオ農業をやると決心するならば、どんな苦労があろうともこのカカオ達を育てあげてやるという強い情熱がなければならないよ。
『カカオ農業をやっていて大変だった事、嬉しいと感じる時はどんな時ですか』
カカオ農家にとって一番たいへんな時期は収穫が終わった後だよ。収穫した後のカカオの木の手入れを早速はじめないといけないんだ。たとえば剪定だったり肥料をあげたりね。そうして次の収穫のための準備をしてあげるんだ。次の収穫量はこの時期の手入れで決まるんだよ。
それから、一番うれしいときは何と言っても豊作だったとき、そして発酵した後に良いカカオ豆ができた時だよ。これさえあれば今までの苦労が吹っ飛んで幸せな気分になるね。
『ビンさんの発酵箱は3段で他の農家では見たことがないんですが、なんでですか?』
Cargillからのトレーニングを受けている時は、どの農家も2段でやっていたし私も最初はそうだった。でもその後に何度か発酵を繰り返した経験で3段が良いのではと試してみたんだ。そして比較すると、今までよりカカオ豆の発酵のレベルが高まったんだ。そして発酵箱の中のカカオ豆を混ぜるのは結構な体力をつかうんだが、3段の方が混ぜやすいんだよ。だから今も3段の発酵箱でやっているんだよ
『ベンチェのカカオ豆はどう思いますか?』
同じ品種のカカオでもカカオの栽培地の土壌によってできるカカオ豆の風味は違うよ。ベンチェの土壌はカカオの栽培にはとても適した土地なんだ。カカオは果樹だから乾燥した環境を好まないんだ。
ベンチェはメコン川が流れるデルタ地方だからね。いつでも年中を通して豊かな水源でカカオの土壌に水をあげることができる。それに肥沃な土地だから農作物の栽培にはとてもいいんだよ。あとこのあたりのカカオ農家は、いろんな果樹と混作しているから、それもきっとカカオの風味に影響してこの土地の特徴を作り出しているんだろう。
『ベトナムの豆で作ったチョコレートは美味しい?』
メーカによっても味が違うからね、でも1つ言えることは昔と比べて格段に美味しくなっているよ。チョコレートを作る技術も海外から学んでどんどん美味しくなっていくんだろうね。
バリアブンタウのカカオ農家。細かいこだわりをたくさんもつ人。
「バリアブンタウで農園をいつから始めたんですか?」
私がこの地バリアブンタウに引っ越してきたのは10歳の時だよ。私の生まれはホーチミン市のチョロン地区なんだ。バリアブンタウに家族で引っ越して家ではコーヒー、胡椒、カシューナッツを栽培していたよ。
2005年に政府の政策でカカオ農業の促進プログラムがあってね、それでカカオの苗を無料で配布してもらえ、カカオ農業の指導を受けられたりしたんだ。そのプログラムに参加させてもらって、苗の付け方、育て方、発酵の方法などを学んだ。そして我が家の畑でもカカオ栽培をはじめたよ。
プログラムへの参加資格を持った人は、学んだことを他の周辺農家にトレーニングをする事が求められていたんだ。だから、週に2回は自分の農園でカカオの栽培に集中して、それ以外の日は周辺農家にカカオの栽培方法のトレーニングをしにいったよ。
その当時、(バリアブンタウ省)チャウドゥック市のカカオの栽培地はわずか20ヘクタールだったんだが、今ではカカオ栽培も皆に知られるようになって400-500ヘクタールまでに広がっているよ。
カカオ農業を始めるということは、同時に幸せと悲しみを共にするということと同じなんだよ。台風の季節には、農民にとっては毎日毎日が木々と共に過ごす苦難の日々だ。害虫の被害や雨季の湿気からの病害や、、、うちの農園も有機作物の栽培を目指しているので、農薬を散布したり、化学肥料を使ったりすることはほぼ無いから、カカオポットを発酵させて肥料にしているんだ。
それから、この地域の土壌は栄養が豊富な玄武岩質の赤い土壌だから、カカオの木だけでなく他の作物にとっても適した土地なんだよ。
私のミッションは良いカカオポット買い付けて、良い発酵と乾燥をさせる事がとても大切だと思ってるんだ。自分の経験ではカカオ豆の品質、美味しさを作るのは発酵が一番大切と思っているよ。
特に発酵の良さを決めるのは、発酵箱に入れたカカオ豆をかき混ぜる方法とタイミングだよ。1つの発酵箱に入っているカカオ豆の温度が同じでなければ、カカオ豆の品質にばらつきができるからね。
かき混ぜて48時間後に、外側にあるカカオ豆を内側になるようにかき混ぜて統一に発酵が行き渡るようにしないといけない、それは外側にあればあるほど温度が低いし内側が発酵が進みすぎる傾向があるからね。
「ベトナムのチョコレートを食べてどう思いますか?」
私はMAROUにカカオ豆を売っているし、BINONに技術協力しているからMAROUやBINONのチョコレートはよく食べているよ。
ベトナムの地域ごとのカカオ豆の味の違いとか、チョコレートの味にも影響がでているのは面白いね。
私はバリアブンタウのカカオ豆から作ったチョコレートにはベリーのような酸味を感じるし、ティエンザンのカカオ豆から作ったチョコレートは果実の酸味と甘みのバランスが良いし苦味が少ないと感じるよ。私達が作ったカカオ豆から世界に通用するチョコレートが出てきているのは本当に嬉しいね。
カカオ農家の2代目、次世代を担う広い価値観をもつ若者。
『いつからカカオ農業をはじめたんですか?』
僕はこの地ダクラクで生まれて育って今年26歳になります。(2021年現在)そして6年前からカカオ農業をやりはじめました。父が地域の農協として農作物の苗を育苗し販売しているんですが、その中にカカオがありました。2007年にこの地でCargillが技術トレーニングを始めた時から親戚がカカオ農園をはじめました。
僕は高校を卒業してから農林大学の農業学部で生物学の博士をしているPHUOC先生のクラスに参加させてもらい、カカオを学びました。先生の講義をきくうちにカカオ農業への熱い気持ちがかきたてられて20歳の時に自分の地元にもどりカカオを発展させるために父の仕事を手伝いはじめました。
『他にも換金しやすい作物はたくさんあるのにカカオを選んだんですね』
カカオの栽培はカシューナッツ、ゴム、コーヒーのような広葉樹が植えられている土地が適していると知り、ダクラクはまさにたくさ
の広葉樹が植えられてるし自分の家の農園にもカシューナッツが植えられているので、その混植でカカオを植えようと思ったんです。
カシューナッツだけでなくカカオも収穫できるようになったら収入も増えて家計も安定すると思いました。
今までカカオの事を教えてくれ、このようにカカオに熱中させてくれた人たちに心から感謝しています。でもカカオを育ているのはそんなに楽じゃありません。それは全てのカカオ農家も同じです。
『今まで一番大変だったのはどんな時でしたか』
雨季に虫が発生してたくさんのカカオの木が病気になってしまった時です。丁寧に慎重に虫を駆除しなければ、たくさんのカカオの木が死んでしまったり、生き残っても収穫がほとんどできない木になってしまいます。カカオ農家にとっては、雨季が去り乾季が来るのが一番気持ちが晴れ晴れする時です。収穫時期でもありますからね。だから農家にとって乾季が待ち遠しいんです。
『ダクラクのカカオは他の地域と比較してどうでしょうか』
カカオはメコンデルタの土壌が栽培に最も向いているとされています。ダクラクは高原地帯になりますが、ここで栽培したカカオはメコンデルタで作ったカカオとは違った特徴的な風味をもちます。カカオ特有のしっかりした苦味を感じ、軽やかな酸味があります。たぶんこのしっかりした苦味はこの土地のカカオ農家の苦労の味なんでしょう。(笑いながら)
ベトナムでも今はたくさんのチョコレートが作られていますね。僕も色んな会社のチョコレートを食べています。
ベトナムのチョコレートだけではなくて海外のチョコレートも色々食べていますよ。
やっぱり工業的な大量製造のチョコレートよりはビーントゥーバーチョコレートが美味しいし好きですよ。
BINONの農園を管理する熱心なリーダー。
『ハインさんは2019年のビノン開園当初から
働いてくれていますが、カカオと関わりだしたのはいつからなんですか?』
2004年頃、ベトナムのカカオ農業のベースが少しずつ変わり始める時に、私はバリアブンタウの農業会のメンバーになんたんだ。その時にカカオの育苗とか栽培の方法を学ぶクラスがあってそのクラスに参加させてもらった時からカカオ農業には関心をもちはじめたよ。
2019年にBINON社がバリアブンタウに設立されて、園内の農園を発展させるという業務に魅力を感じて入社したんだ。
『ビノンの農園は観光農業型ですが、通常の農業との違いはありますか?
カカオの木をしっかり早く成長させるためにはどうすればいいだろうかと毎日考えているよ。たくさんの花をつけて実をつけて国内や海外のお客様を迎えて喜んでもらえるようにしたいからね。
日々水やりをして雑草を抜いてカカオに害を与える虫がいないかチェックして手で取るという事をしてカカオの成長を見守っているよ。ビノンも開業から2年たって最初のカカオの実が実り始めたんだ。
園内にはカカオ以外にも色んな果物とか花も植えて育てているんだよ。年間を通じて色とりどりの花があって、果実がとれる方がよりたくさんのお客様に喜んでもらえるだろう。マンゴー、ミルクフルーツ、バナナ、ジャックフルーツ、パパイヤ、、、たくさんの果物が収穫できるよ。
『BINONでの仕事で一番嬉しいと感じる時はどんな時ですか?』
2年という期間は決して長いわけではないが、毎日カカオや果物が育っていくのを見るのはとても嬉しいよ。農園が発展していくのをみたら苦労が飛ぶね。それに観光のお客さんが来て、カカオと一緒に笑顔いっぱいに写真を撮って、「カカオって可愛いですね!」「こんな良い場所あるなんて他の友だちにも教えてあげる」っていうのを聞く時は本当に嬉しいよ。それにもっと頑張ろうっていう気持ちになる。
サンジェラの頼もしいカカオ買付担当
『ベトナムのチョコレートのことは前から知っていたんですか?』
私は食品の専門学校を卒業して、チョコレートのことは大好きです。でもサンジェラで働くまではこんなに深くチョコレートに接することはありませんでした。サンジェラで買付担当になんてから、カカオ農園に行き農家さんと話し、品質の高いカカオ豆を作る農家さんとの関係をつくりながら、だんだん良質のカカオ豆から作るチョコレートやカカオ製品についても興味をもつようになりました。
「このカカオ豆から何ができるのかな?」いつもそう思いながらカカオ豆の買付をしています。
『カカオ豆からの商品作りの方にも興味があるのですか?』
はい。お菓子作りは大好きですから。カカオという原材料はチョコレート以外にも色んな商品ができるので幅が広いフルーツだと思います。たとえばカカオティーやグラノーラなどたくさんの商品を作ることができます。
そして、カカオ豆自体の品質の高さが商品の美味しさに繋がるなと実感しています。
『色んな地域のカカオ豆の買付をしていますが、地域による違いはありますか?』
現在、ベンチェ、ダクラク、バリアーブンタウの3の地域のカカオ豆の買付をしています。地域によって、また農家によっても、苦味、酸味などの風味や香りが異なります。
たとえば、ベンチェの豆はベリー系のフルーツのような酸味と奥深い甘さがあり、ダクラクの豆は特徴的な苦味があり、ブンタウの豆は青りんごのような酸味とシナモンのようなスパイシーさを感じます。
『仕事をしていて一番うれしいのはどんな時?』
発酵や乾燥の基準を満たして、品質が高くて美味しいカカオ豆を買うことができた時には、これを使ってお客様が美味しいチョコレートやスィーツを作れるなぁ、喜んでくれるだろうなぁと思うととても満足した気持ちになり、嬉しいです。